2012年12月11日火曜日

書評:香辛料の世界史(リュシアン・ギュイヨ)

本書では,大きく言うと3部から成り立っています。
香辛料の起源,香辛料の世界展開(大航海時代),最後に各々の香辛料・ハーブ等の解説。

1987年に出版されたもの(しかも1972年出版のフランス語原書を翻訳したもの)と古書なので,よりわかりやすい本が既に存在すると思います。以下,印象に残った点をいくつか。

1 大航海時代にスパイスは非常に価値のあるものであり,ビジネスとして多大な財を生み出すものであった。現在の100円ショップに陳列するスパイス群を見るに,どのようなビジネスも成り立たなくなる可能性はある。現在の貨幣ですら,将来的に価値を失うことは十分にあり得る。栄枯盛衰。

2 香辛料交易の支配国の交代劇を見ると,現在,中国・韓国に抜かれようとしている日本が,オランダに被るようである。
・大航海時代におけるスパイス交易において,最初はポルトガルが支配力を有した。寄港地と,重要市場を占領しただけであったこと,ヨーロッパでの香辛料を自ら売りさばかず,また植民地経営も稚拙であり,スペインに一時的に統合されたことを受け,あっという間に没落。

・その後,オランダがポルトガルの植民地占有権を奪取し,「東インド会社」の名の下に統合。商業組織として,並外れた利益を実現した。しかしながら,東インド会社も,当時の行政官達が無能力であり,金銭欲に走り,また現地民から収奪を行ったことにより,没落。イギリスやフランスという手強い相手との競争に負けたことも原因のひとつ。

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