本書では,大きく言うと3部から成り立っています。
香辛料の起源,香辛料の世界展開(大航海時代),最後に各々の香辛料・ハーブ等の解説。
1987年に出版されたもの(しかも1972年出版のフランス語原書を翻訳したもの)と古書なので,よりわかりやすい本が既に存在すると思います。以下,印象に残った点をいくつか。
1 大航海時代にスパイスは非常に価値のあるものであり,ビジネスとして多大な財を生み出すものであった。現在の100円ショップに陳列するスパイス群を見るに,どのようなビジネスも成り立たなくなる可能性はある。現在の貨幣ですら,将来的に価値を失うことは十分にあり得る。栄枯盛衰。
2 香辛料交易の支配国の交代劇を見ると,現在,中国・韓国に抜かれようとしている日本が,オランダに被るようである。
・大航海時代におけるスパイス交易において,最初はポルトガルが支配力を有した。寄港地と,重要市場を占領しただけであったこと,ヨーロッパでの香辛料を自ら売りさばかず,また植民地経営も稚拙であり,スペインに一時的に統合されたことを受け,あっという間に没落。
・その後,オランダがポルトガルの植民地占有権を奪取し,「東インド会社」の名の下に統合。商業組織として,並外れた利益を実現した。しかしながら,東インド会社も,当時の行政官達が無能力であり,金銭欲に走り,また現地民から収奪を行ったことにより,没落。イギリスやフランスという手強い相手との競争に負けたことも原因のひとつ。
2012年12月11日火曜日
書評:ケーキの丸かじり(東海林さだお,2003)
言わずもがな,東海林さだおの丸かじりシリーズである。
本書,2003年発行と古いのだが,まあ古くささは感じさせないのでよいとしよう。
丸かじりシリーズの魅力は,受ける人によってそれぞれ異なるのであろうが,私にとっては「普段何も考えずに過ごすことを,一つ一つ分析する」描写に特に魅かれる。料理の「おいしさ」というものを,いちいち個別の行程に分けてくれるのである。実に食べ物を見る目が変える書物である。
例えば,水餃子を食べる過程を以下のとおり分析している。
「まずモッチリと茹だった皮がおいしい。」
「注文の都度のばす皮は,打ち立てのうどんそのもので,もちもちしてコシがある。具を包んでいる部分は皮が薄くてシコシコしたうどんの味。合わせ目のヒダのところは皮が厚くなっていて熱が通りにくい分だけスパゲティのアルデンテ状態。」
「少し芯があって噛み応えがあり,ここの部分を主食として味わい,薄い皮と具の部分をおかずとして味わう。」
「口の中で主食とおかずを噛み分ける。噛み分けたのち合体させる。」
「アグアグと合体させているとき,うどんとスイトンとワンタンをいっしょに食べているような気分になり,だけど餃子だかんな,そこんとこ忘れてしまっては困るよ,と,豚肉のみじん切りとキャベツと白菜とニラがジンワリと念を押しにくる。」
長々と書いたが,この分析の視点というものは,何も食物に限ったことではない。通常の読書であったり他の趣味であったり,他のものにも応用可能である。というか応用させて行きたい。
また,わかっちゃいるけれども,あえて言葉にしないことに着目する着眼点も魅力の一つである。
「イチゴを取り去った跡は,白い生クリームが剝げて下のスポンジが現れ,その傷口が痛々しい。すまぬ,と思う。」
雑煮というある意味神格化されがちな食べ物に対するメスも容赦が無い。
「普通の日に食べてみると,雑煮の貧しさがつくづくよくわかる。正月という舞台装置があるから雑煮は主役を張れるのだ。」
「餅は水褄動物ではない。もともと陸で生きていく食べ物だ。だからぼくはツユに没している餅を見ると気の毒でならない。」
プラムを握り具合という変化球から攻める姿勢にもグッとくる。
「プラムは握り具合がいい。握り具合がいい,が果物に対する賛辞にとなるのかどうかはともかくとして,とにかく握って楽しい。ちょうどゴルフボールぐらいの大きさで,プラム独特の硬さが手に心地よい。」
また,一般的な心理分析を,食べ物に応用させる手はずも見事なものがある。
「冷静でスタートし,やがて興奮機に至り,過大な期待とともに購入期を迎え,落胆期を経て強引な納得をもって幕を下ろす」福袋を,刺身の盛り合わせであったり,ニシンの塩焼き(カズノコかシラコ)で比較している。
「梅まつりには甘酒が似合う。・・・湯気の立つ大きな寸胴鍋から,大きなヒシャクで紙のコップについでくれる。このヒシャクがいい。」
「回転寿司は全員うち揃った姿で,同じ高さで,同じ容器で回っているせいか,なにかこう,粛々と回っているという雰囲気であるが,回転飲茶は高さが高い。むろん低いのもあるが,うんと高いのや,少し高いのがゴトゴト揺れながら列をなして回ってくるので,京都や飛騨などのやまぼこ巡行といった趣がある。」
とまあ難しく書きましたが,本編そのものは非常に読みやすく,気分転換にちょうどいい。その上,何かしら学ぶところもあるので,四半期に一度くらいは読みたくなる本です。
2012年12月5日水曜日
アンゴラ料理レシピ:魚のカルル(Calulu de Peixe)
カルルとはアンゴラの伝統料理であり、アンゴラならではの料理である。
というのも、使用する食材が非常に特徴的。
他国ではなかなか手に入らない野菜(Jimboa、Couve)、パーム油、干し魚といった食材に、ピリピリなんかも加える。アンゴラ食材の集大成といっても過言ではないかもしれん(笑)。
味は、各家庭によって本当に異なるだろう。魚、干し魚、トウガラシの味によってを味は変わり、またレシピによってはレモンジュースやバジルを加えるものもある。
お好みでいろいろ試してみるといいのではないだろうか。
食材(2~3人前)
魚 300g
干し魚 100g
ナス 100g(皮をむく)
オクラ 100g
トマト 100g(皮をむく)
タマネギ 1個
Gimboa 200g(サツマイモの葉でもよい)
パーム油 50g
ピリピリ 適量
塩 適量
レシピ
1 魚を食べやすい大きさに切り、塩を少々ふる
2 水を少々沸騰させ、パーム油と食べやすい大きさに切った野菜を入れる。
3 再び水を加え、30分ほど煮る。
4 干し魚を加え、またしばらく煮る。
5 水が足りなくなれば加えて、徐々に煮詰めていく。
6 魚をくわえ、軽く火がとおるまで弱火で煮る。
7 好みでピリピリを加えて、できあがり。
2012年12月2日日曜日
スペイン料理:イカのオリーブ油炒め(サンタンデルスタイル)
スペインらしく、海産物をオリーブ油と塩だけで味付けしたシンプルな料理。
サンタンデルとは、スペインの北部中央に位置する、立派な港湾を有する街のこと。
材料(2人前)
・小さめのイカ 6杯
・(あれば)春タマネギ3個
・タマネギ1個(細切れ)
・ポロネギ1本(白い部分細切れ)
・オリーブ油
・塩
調理
1 イカをさばき、内臓や目玉を取り除き、食べやすい大きさに切る。
2 フライパンにオリーブ油をしき、イカの両面をしっかりと焼く。足も焼く。
3 イカを取り除く
4 春タマネギ、タマネギ、ポロネギを同じフライパンで炒め、塩で味付け。
5 4を皿の上にしき、その上に胃かを乗せてできあがり。
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